妻側の判例か夫側の判例かによって生じる大誤算

離婚判例を見るときに、欠かせない視点はそれは妻側からの請求なのか、夫側からの請求なのかという点です。

この視点なしに何々の場合は慰謝料がもらえますか、とか離婚できますか、と書いてある記事はたいてい的外れだと思います。

簡単に言うと、離婚によってかわいそうなのは妻の方、という考え方が裁判所にはあります。

平均的に女性は男性より収入が少なく、婚姻というのは生活保障でもあった。
婚姻という生活保障がなくなると社会保障に頼ることになって、国家が面倒をみないといけなくなる。
 
よく結婚のときに一生守りますと男の人が言いますが、婚姻は一生生活費の面倒を見ますという契約であって、簡単には契約破棄はさせない、破棄するならお金も払わせる、というのが歴史的な裁判所の考え方であったといえると思います。
 
なので、夫側に対してある判例があるからといって、ただちに妻側にもあてはまるのかは慎重に考えなければなりません。
 
ただ、一方で女性の方が収入が少ないという現実がありながら、一方では男女平等という建前があります。
 
なので、おおっぴらには妻がかわいそうだからということは判決には書いていません。
 
しかし、よく全体を読むとそうなのかということが読めてきます。
 
では、今後もそうなのでしょうか。
 
安倍政権も女性が輝く社会の実現を目指しています。社会は確実に男女間の収入格差が狭まる方向に動いていると思います。
 
一方で、女性には育児等仕事以外にも役割があり、仕事も男性並みにするのは大変、という現実があります。
 
余談ですが、もったいないと思うのは仕事自体は平均的に女性の方ができると思われるところです。
 
個々を見ると例外があるのは当然で、決めつけはいけませんが、集団として平均をとると仕事の正確さ、粘り強さや新しい仕事に対する学習能力の高さなどどれを取っても女性の方が有意に優れているといえると思います。
 
就職試験でも普通に選考すれば女性の方が優秀なので女性ばかりになってしまうため男性にゲタをはかせているという話も聞きます。
 
それはさておき、社会は男女平等と言いつつも、結果の平等については諸事情によって変わりつつも変わりきれない、将来的に完全に変わるかもわからない、という状況にあります。
 
裁判所は社会の鏡であり、裁判所の判断も、変わりつつも変わりきれない、ということになるでしょう。
 
大まかな方向でいえば、有責主義から破綻主義へ、慰謝料による補償から財産分与による清算へ、という流れだと思います。
 
おそらくフェミニズムの立場の方はそういう方向で割り切るべきだという考えだと思います。
 
保守主義である私は、そうは言っても現実は・・・
 
ということで裁判所の大岡裁き的傾向もしばらく続いても仕方がないのかなと思います。 
 
ただ、女性の皆さんにはぜひ世の中がそういう方向に動いていっているということは意識していただきたいと思います。
 
昭和的に夫を支え続けたのにひどいのではないか、という言い分がいつまでも通用するかわからないからです。  

 

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