よくネットとかに書いていますが、婚約が成立している場合、これを一方的に破棄された場合正当な理由がない限り慰謝料を請求できるというのが通説です。
これを当然の前提として、では正当な理由とはどういうことか・・・という論じ方が多いと思います。
つまり正当な理由を立証するのは婚約を破棄した側というのが通説です。
しかし、私はこういう論じ方について疑問を持っています。
関係の解消が婚約ではなく離婚であった場合、離婚慰謝料は単に離婚を切り出したということだけでなく、離婚に至る経緯に不法行為に当たる違法性が認められる必要があり、その立証責任は請求側にあります。
なぜ婚姻よりも拘束力が弱いはずの婚約において立証責任が転換しているのでしょうか。
もっといえば、単に性格が合わないという理由は婚約不履行の正当理由にはならないというのが通説だと思いますが、なぜ離婚であれば性格が合わないという理由で離婚を申し出てもそれだけで慰謝料請求が認められることはないのに婚約不履行の場合は慰謝料を払わないといけないのでしょうか。
おそらくこれは歴史的経緯でいえば、婚約を破棄された女性がいわゆる「傷物」になりかわいそうというのが理由だったのではないかと思います。
現代においてそのような理由が妥当するのかは私は非常に疑問に思っています。
判例にも
「婚約解消を理由として、それまでにかかった費用の清算以外の精神的損害に対する損害賠償義務が発生するのは、婚約解消の動機や方法等が公序良俗に反し、著しく不当性を帯びている場合に限られるものというべきである。」としたものもあります(東京地裁平成5年3月31日判決)
結婚をするかしないか、というのは個人の尊厳に関わることだとすれば、婚約の拘束力は緩やかに解すべきであり、費用の精算以上に慰謝料請求が認められるのはそれ自体が不法行為に当たる場合に限るというべきではないでしょうか。